「何度でも挑戦できる町」燕三条で出会った、はじめの一歩
自分の未来に迷っていた。
仕事が続かない。人間関係もうまくいかない。
施設を出た後、思っていた「自由」は、不安と孤独の中にあった。
そんな僕が出会ったのが「燕三条」という町。
きっかけはたった3日間の移住体験だった。けれどこの3日間は、これからの人生を考え直すきっかけになった。
Contents
児童養護施設が「ない町」で見つけた支え
燕三条には、児童養護施設も自立援助ホームもない。
それを聞いたとき、正直「ここには自分のような人間はいないのか」と思った。
でも、それは間違いだった。
この町には、「自分のような人間」がいなくても、僕たちのような背景を持つ人たちに寄り添おうとしてくれる人が確かにいる。
制度や施設ではなく、“人”が動いている。そんな実感があった。
【1日目】はじまりの夜
初日は、元法務省勤務の大島さんとの食事会。
彼は少年院で働いていた経験があり、再犯防止や家庭環境について、深く丁寧に語ってくれた。
「誰かに話を聴いてもらうって、こんなに心が軽くなるんだな」と思った。
僕自身が言葉にできなかった過去や不安を、大島さんは自然に引き出してくれた気がする。
【2日目】働く現場を巡る
この日は、燕三条の企業をぐるりと見学。
どの会社も個性的で、それぞれの“働き方”が見えた。
▽ 結城さんの訪問
まず訪れたのは、地域で若者支援に取り組む結城さん。
彼の話の中で心に残ったのは、「最初から全部頑張らなくていい」という言葉。
一歩だけ踏み出す、それがここでのスタートだと知った。
▽ 清水商事
卸業の仕事を見学。商品を仕分けしてピックアップする作業。
女性スタッフも多く、力仕事に不安がある人でも安心できる環境だった。

▽ GMクレスト
建物の中で行う軽作業や、地域に密着した仕事が多く、職人として経験を積めば給与も良い。
「誰にでもできる仕事」という言葉が、自分の可能性を少し広げてくれた。

▽ シマト製作所
プレス、塗装、組み立て、検品、梱包…。驚いたのは、作業のジャンルが本当に幅広いこと。
障がいのある人も多く働いていて、「できること」に合わせて業務を選べる柔軟さがある。

▽ ファームフレッシュヤマザキ
ここでは大規模農業が展開されていた。
時期によっては短期の働き手も募集していて、「短期間だけ働きたい」という人にはぴったり。
汗をかきながら自然の中で働くことが、気分転換にもなる気がした。

▽ スノーピーク
キャンプ用品ブランドとして有名な企業だが、ここにはサウナ施設もあった。
仕事の合間に訪れたサウナで、心と身体がゆるみ、久しぶりに「リラックスする」という感覚を味わった。
【3日目】“ものづくり”と“体験”で知った手応え
この日は、体験の連続だった。
▽ 鍛冶道場
本格的な鍛冶体験。鉄を叩いて形を変える作業には集中力が必要で、「今ここ」に意識が向く。
何かを作る楽しさ、手応え、やり遂げた感覚。
普段の生活では味わえない達成感があった。
▽ SUWADA(諏訪田製作所)
プロの職人たちが、丁寧にモノを作っていた。
工場見学の中で、「こんな世界があるんだ」とワクワクした気持ちになった。
決して派手ではないけれど、誇れる仕事がここにはある。
▽ アイアンプラネットでの溶接体験
溶接なんて人生で初めて。
でもやってみたらすごく楽しくて、普通のアミューズメントパークよりもずっと面白かった。
「仕事がこんなに面白いなんて、想像してなかった」
そう思えたことが、自分でも驚きだった。
https://iron-planet.net/base/11596/

卒業後の「その後」に必要なもの
児童養護施設を出た後、多くの人がぶつかる壁は同じ。
仕事が続かない。住む場所がない。頼れる人がいない。
人との距離の取り方が分からないまま社会に出て、つまずいてしまう。
そんな自分を責め続ける毎日だった。
でも燕三条では、「何度でも失敗していい」と言ってもらえた。
その言葉が、どれだけ救いになったか分からない。
働き方の選択肢が豊富なまち「燕三条」
燕三条には、企業がたくさんある。
三条市だけでも5000社以上。燕市も600社以上の会社がある。
その中には「オープンファクトリー」という取り組みを行う企業も多く、実際に工場の様子を見て、体験もできる。
溶接、農業、梱包、軽作業、溶接…。
いろんな仕事を少しずつ試せるから、「まずやってみる」が叶う場所だった。
短期の仕事も多く、最初から「長く働けないかも」と伝えても、それに合った仕事を紹介してくれる。
つまり、この町は「ワークホッピング」ができる町なのだ。
働く場所だけじゃない。暮らせる場所もある
株式会社コネクションという会社は、「仕事だけでなく、住まいも支援する」というユニークな取り組みをしている。
引きこもりの人や、長期就労が難しい人に合わせて仕事を見つけてくれるだけでなく、シェアハウスのような住まいも提供している。
何よりも驚いたのは、仕事の報酬が「日当ではなく、プロとしての単価」で設定されていること。
自分の仕事に価値を感じられるって、当たり前のようで難しいことだと思う。

ここなら、やり直せる
燕三条での3日間の体験は、自分の中に小さな希望を灯してくれた。
何かを成し遂げたわけではない。
でも、「もう少し生きてみよう」「何かもう一回やってみよう」と思える自分に出会えた。
この町は、失敗しても大丈夫な場所だ。
挑戦することが歓迎される場所だ。
だから、迷っているなら一度訪れてみてほしい。
今の自分のままで、ここから始めていい。
燕三条には、そんな優しい空気が流れていた。

最後に
この3日間の体験を経て、「新しい未来を創る」なんて大げさに聞こえるかもしれない。
でも、自分にとっては確かに“はじまり”だった。
迷っているあなたへ。
この町で、次の一歩を踏み出してみませんか?
くらしの相談窓口は「サンクチュアリつねよし」まで。
CURATOR / nobu