従業員の安全と飲食チェーンの未来を設計する「株式会社ハイサーブウエノ」

■ 略歴とキャリア
小越元晴様は、新潟県三条市出身の52歳(取材時)長岡高専で土木工学を学んだ後、アメリカの大学に進学し、20歳から25歳まで5年間留学されました。専攻は都市計画でしたが、卒業は経済学部。都市計画で卒業するにはもう1年在学が必要だったため、経済学で学位を取得しました。
帰国後、ハイサーブウエノと取引のあったベンチャー企業「テクニカ」を会長から紹介され、修行に近い形で東京の同社に約7年間勤務。創業2年目の小規模な企業を選んだ理由は、「小さい会社ほど短期間で幅広い経験が積める」と考えたからだと語ります。
同社では、大手ファミリーレストランチェーンの厨房設計や施工、店舗全体の構築に携わり、営業窓口を担当。特に「ジョナサン」の業態に深く関わり、2週間に1店舗のペースでオープンするプロジェクトに尽力しました。

■ 家業を継ぐ決意
高専時代から「いずれは自分が継ぐだろう」と意識されていたとのこと。中小企業の場合、借入を伴う事業は身内でしか継承できないため、自然とその思いは強くなっていきました。アメリカ留学の際は「将来的にハイサーブに入社する」ことを条件に、渡航費用を両親から支援してもらったと振り返ります。
小越様のご親族も会社を支えており、義弟2人が幹部社員として活躍しています。
■ ハイサーブウエノの歴史と社名の由来
ハイサーブウエノは、小越様のお父様が創業。当時は厨房の板金製造が主力でしたが、日本で回転寿司が広がり始めた時期に、地元の飲食チェーンから依頼を受け、回転寿司レーンの製造を開始。これが同社の成長の契機となりました。
社名の「ウエノ」は、創業者が22、23歳のときに修行していた「上野製作所」への感謝を込めたものです。「ハイサーブ」は「ハイクオリティのサービス」を意味し、「恩を忘れない」という想いを込めて現在も社名「ウエノ」を残しています。

■ 社長就任と経営改革
2005年にハイサーブウエノに入社。当時は大手回転寿司チェーンに売上を依存していましたが、取引終了に伴い売上が半減し、会社は厳しい状況に追い込まれていました。約6年後の2011年、東日本大震災の年に社長に就任。就任後は
「得意な領域に集中し、不採算事業から撤退する」
という方針で再建を図りました。
営業が苦手な同社の弱みをカバーするため、「お客様からの紹介で仕事が広がる仕組み」を構築。地元依存の脱却を目指し、新規顧客の開拓に力を入れました。
また、地元の個人飲食店ではなく、自社技術を活かせる大手飲食チェーン店を主要ターゲットに変更。個別のニーズに応えるフルオーダーメイドの厨房設備を設計・製造することで、高い付加価値を提供。価格競争から脱却しました。
■ 業績回復と今後の展望
一時は社員の離職が相次ぎましたが、基礎体力をつけるため、安価でも安定受注できる仕事を取り入れながら再生を図りました。品質向上のために燕三条のネットワークの協力を得て、製品の安全性を高めた結果、信頼を回復。
厨房設備は、規格品ではなく、店舗の構造や業態に合わせた設計を採用。例えば、「吉野家」のような大手チェーン店は、15年前と比べてメニューが多様化したことで厨房設計も進化。注文や配膳動線の最適化を重視し、個別ニーズに合わせた設備設計を強みにしています。
「大手厨房メーカーの規格品を販売するだけでは差別化できない。オーダーメイドでお客様に最適な厨房を提供することで価値を発揮する」と小越様は語ります。

■コロナ禍での迅速な対応と市場拡大
当社がコロナ禍に直面したのは2019年末。2020年の前半は厳しい状況が続きましたが、7月頃には「飛沫防止対策」へのニーズが急速に高まりました。ある日、セブンイレブンやローソンがレジ前にカーテンを設置したニュースが報道されると、翌日には「すかいらーく」や「ブロンコビリー」から飛沫防止グッズの製造に関する問い合わせが入りました。
この相談をきっかけに、当社は厨房設備から飛沫防止対策へと大きく舵を切りました。
その結果、3年間で50万台以上の飛沫防止グッズを販売。特に外食チェーン向けに圧倒的なシェアを獲得しました。当社の生産体制だけでは追いつかず、燕三条のネットワークを活用して増産。既存顧客を最優先に対応し、多くの飲食店から高評価をいただきました。
■コロナ後の飲食業界と設備投資の動向
コロナ禍で多くの企業が事業再構築補助金などを活用しましたが、マーケティング戦略のないまま設備投資を行った企業は現在苦戦しています。一方で、当社は大手チェーンが主なクライアントであったため、コロナ禍に戦略的店舗展開を進めました。
コロナ後の飲食業界では、個人店の閉店が増加。特にラーメン店、焼き肉店は過剰出店による競争激化で閉店が相次ぎました。一方、大手チェーンは安定しており、焼肉キングなどは絶好調です。コロナ禍で人員削減を行った店舗は人手不足に苦しむ一方、雇用を維持した鳥貴族などは今でも安定した運営を続けています。
大手チェーンは人手不足対策として、無人化ではなく 生産性向上のための設備投資 を強化。例えば、オーダー端末やオートリフトタイプのフライヤー導入、ドア自動開閉型洗浄機など、細かな設備改善によって効率化を図っています。ロボット導入は意外と進まず、地道な改善のほうが効果的であることが明らかになっています。
■海外との違いと日本の課題
海外チェーンはオペレーションがシンプルで、誰でも対応できるようマニュアル化が徹底されています。一方、日本の飲食チェーンは多彩なメニューを提供し、作業が従業員に依存する傾向があります。この違いが、効率や収益性に差を生んでいます。
今後、日本の飲食業界が成長するためには、付加価値を高めた魅せ方 が重要になります。単に価格競争を行うのではなく、サービスや演出で価値を高めることで競争力を維持できるでしょう。

■今後の戦略と課題
当社が重視するのは、新規顧客の獲得よりも 既存顧客の満足度向上 です。既存顧客との信頼関係を深めることで、別の会社や取引先を紹介してもらうといった広がりを狙っています。
また、当社は価格競争を重視していません。それでも選ばれる理由は、製造の原価以上に 組み立てや倉庫管理、出荷まで一貫して請け負える総合力 にあります。例えば、都会では倉庫コストが高騰していますが、新潟で一元管理することでコストを抑えることができ、お客様にとってもメリットとなっています。
■合弁会社設立と工場拡張の背景
当社はサイゼリヤと合弁会社「CSsT」を設立。これはサイゼリヤのノウハウを他チェーンにも活用してもらうことで、業界全体の底上げ を目指すためです。三条市では新たに第三工場を稼働。インター出口までの広大な土地を購入し、成長に向けた基盤を拡充しました。
この工場建設は、単なる自社成長のためだけでなく、国内の厨房板金業を守るため でもあります。下請け業者が価格競争に晒される中、当社は大手チェーンと直接取引することで安定した経営基盤を確立しています。これからもリスクを背負いながら成長拡張を続け、日本の厨房板金業を支える存在であり続ける覚悟です。

■まとめ
小越社長は、アメリカ留学とベンチャー企業での経験を活かし、経営改革を成功に導きました。強みである板金技術とオーダーメイド設計に特化し、競合との差別化を実現。今後も柔軟な発想と技術力で、新たな市場への展開を目指しています。
スタッフ募集
ハイサーブウエノ
求人情報
溶接工2名、電送組み立て1名、営業1名
勤務時間、休日等:完全2日、年休119日(2025年)
従業員数:100名を超える
https://www.hi-serv.com/
CURATOR / nobu








